「不況を跳ね返す活き活き企業づくり」 PARTII ~不況を跳ね返す人事制度づくり~

経営tips

前回は会社が不況を跳ね返すために人事面で取り組むべき課題として「チーム力の強化」を挙げましたが、今回は不況を跳ね返すための人事制度(賃金制度や評価制度等)の改革について考えてみたいと思います。

1.今だからできる改革に着手しよう

不況期は会社にとって試練の時期なのですが、不況期こそ企業改革するチャンスであり、人材育成の好機なのです。景気が良いときは、従来どおりのやり方でやっていてもそれでなんとなくうまくいってしまうところがあり、多少の不都合・不具合があったとしても改革を行うのはなかなか難しい面があります。

人事制度にしても同様で、会社を経営して社員を雇用している場合、なんらかのルールに基づいて賃金を支払ったり人材の登用を行ったりしていますが、そのルールはだんだん時代に合わなくなったり、社員間のバランスがとれなくなったり不具合がでてきます。

特に賃金は働いている人の生活と直結していますので、変更したいと思っても簡単に変更にできないのですが、不況期は今までの人事制度を見直して、より自社の経営方針に合った方法を導入するチャンスなのです。

また、このような不況のときは労使とも緊張感をもって仕事に臨みますから、かえって社員の成長があり、人が育つとも考えられますし、またそのようにしていかなければならないとも言えます。

2.見直しが必要な人事制度

高度経済成長期に多くの企業で採用されていた「会社にいれば年々役職が上がりそれに伴って賃金が上がっていくという年功序列型の人事制度」は会社が年々拡大していくことが前提条件です。

長引く不況でこの制度を維持するのは困難になってきており、代わるものとして成果主義人事制度の導入が大企業を中心に進められてきました。しかし、聞こえてくるのはその失敗事例ばかりで、見直し論も盛んです。

会社への貢献度合いに応じて賃金にメリハリを付ければ社員は頑張るだろうという考えに基づいて設計されましたが、思惑どおりにはならなかったようです。

一方、今までどおり年功型の人事・賃金制度を続けている会社では、売上・利益が減少していく中で、人件費の負担が増えるのを避けるため、ほとんど全員の昇給をストップしている企業もあります。

この場合も社員の士気は低下してしまいます。経済環境の厳しい今、年功型の人事・賃金制度を継続している企業も、成果主義の人事制度・賃金制度の導入を進めてきた企業も改めて制度を見直す必要に迫られているように思います。

では、これから時代にはどのような人事制度がふさわしいのかについて考えてみましょう。

1.大切なことは「これから」どうしたいのか

人事制度の見直しを検討するとき多くの経営者の方は以下のように答えられます。

  • 社員の貢献度に見合った給料を支払うことによってがんばった社員が報われる制度にしたい。
  • 公平性・納得性の高い人事評価制度を作り、社員を活性化したい。

貢献に見合った賃金を支払うことに異論はありませんし、そうするためには公平性・納得性の高い評価制度が必要でしょう。

しかし、この考え方は過去の業績や仕事ぶりにのみ視点がいっているということに注意が必要です。人事制度というと「賃金を決めるためのもの」として捉えられがちです。

そのように考えると社員の仕事をいかに正確に評価し、貢献度に応じた賃金の按分をするかということに関心が集中してしまいます。

成果主義賃金の場合は特にこの傾向が強くなります。人事制度を「賃金を決めるためのもの」だけと捉えると、制度の設計は失敗してしまいます。

制度の趣旨を「お金の配分」におく以上、社員の意識は「損をしないため、得をするためにはどうするか」に向きますし、経営者はいかに客観的で、公平な配分を行っているかの説明に腐心することになります。

さらに成果主義は人件費の総額を抑えるために利用された感があり、社員の会社に対する不信感を募らせる結果になりました。これでは全く経営の役に立たないどころか、会社の中もギスギスしたものとなってしまします。

人事制度の本来の目的は社員の成長を通して会社が発展することです。人事制度の改革に取り組むためには、「これからどのような会社にしていきたいのか。そのためにはどのような人材が必要か。」という経営の原理原則に立ち返ることが大切です。

社員の成長のための人事制度ですから例えば評価制度は賃金の公平な按分のためだけでなく、今後の社員の成長に繋がる評価制度の構築が必要となりますし、賃金制度についても人材育成の観点からの見直しが必要となるでしょう。

2.不況期の人材育成

先に不況こそ人材育成のチャンスと述べましたが、不況期の人材育成の方法には今までと違った考え方が必要です。

研修やセミナーに参加させ後々身についてくればいいだろうというような高度経済成長期の余裕のある教育の仕方では、売上や利益が大きく減少していく中で、そのような悠長なことは言っていられません。

社長は、自分はいかにして今の知識、技能、考え方を身につけたかを振り返ってみてほしいのです。どのようなことで失敗し、どのような経験で成長し、さらなる上を目指すために、何をしたのか?

自社の人材育成の答えは自身の中からしか得られないものです。
これからの時代に一番大切なことは成功するための考え方だと思っています。

社長はそのノウハウを自分の中に持っているのです。それを整理して、ひとり、またひとりと社員に伝達していくことが真の人材育成であると思います。